国際通貨制度ノート

明日のテスト答案まとめ。2問できてませんが…。


国際通貨制度 テスト答案

  • 語句の説明問題

1. SDDS
 1996年に策定された、基本的な経済データを公表するための基準。データの範囲、一般からのアクセス、信ぴょう性などの基準を定めており、SDDSに加入した国はその基準を順守する義務がある。

2. CMIとCMIN
 CMIはアジア通貨危機の反省として、東アジア諸国における二国間通貨スワップである。
少額である、二国間のみである、無条件に引き出せる額に制限があるなど、多くの問題点があったが、2010年にマルチ化される、2012年に2倍の準備額に引き上げられるなど、徐々に利便性が改善されつつある。

3. ハイパーインフレーション
 物価が急激な勢いで上昇すること。特に、通貨危機に際して通貨の信用がなくなるとハイパーインフレーションが発生する。

4. 第1世代危機と第2世代危機
 第1世代危機は固定レートを導入している国において発生するものであり、輸入超過によって外貨準備を使い果たした国に訪れる危機である。主に通貨の流出によって引き起こされる。対して、第2世代危機は変動レートを採用している国にも発生する者であり、投資家の投機的な群集行動により急激な資本流出が発生し、それによって引き起こされる危機である。

5. マーストリヒト収斂基準
 ユーロ導入の際に満たさなければならない基準である。①インフレ率は、最も低い3か国の平均を1.5%上回ってはならない。②長期金利が、最もインフレ率が低い3か国の、長期金利より2%上回ってはならない。③為替レートを2年間、再調整してはならない。④財政赤字GDP比で3%以内である。⑤借金総額がGDP比で60%以内である。これらの基準を満たす必要があった。

6. ハードペッグ
 ハードペッグは、カレンシーボード制もしくは自国通貨の代わりに他国の通貨を用いることである。カレンシーボード制とは、自国通貨を他国通貨にペッグし、外貨準備として保有しているだけの自国通貨を発行する制度のことである。これにより、自国通貨に信任を持たせることができ、無制限な乱発もできないためインフレも終息する。

7. Bipolar view
 1990年代中ごろに現れた考え方である。その当時起こった主な危機は、固定レートやペッグされた為替レートによるレジームだったという認識に基づいている。ペッグされたレジームにおいては、ヘッジされない借金が奨励される傾向にある。そのためバランスシートは脆弱になる。Bipolar viewは、実行可能なレジームは「ハードペッグ」か「フリーフロート」のどちらかである、という考えである。ある国が資本移動を自由にするならば、ハードペッグ以外のペッグ制では持続できない。ハードペッグにするか、もしくは完全に変動相場制を受け入れるか、ということである。

8. Catalytic financing
 危機に瀕している国に対して、単独で介入するのではなく、協調する国と共同で介入することを指す。単独で行うよりも資金面でより大きなものが期待できるので、効果が増すと考えられる。

9. Exchange rate based stabilization
 激しい物価上昇の危機に瀕したときに、インフレ率低下を目指して行われる固定相場制への移行のことである。特に、ラテンアメリカ各国において用いられた。

10. IMF surveillance
 IMFの主な業務の一つである。国や世界、地域の経済・金融の発展をモニタリングしたり、IMF加盟国の経済政策について助言を行ったりする。危機の予防への役割が期待される。

  • 記述問題

1. 最適通貨圏の理論の枠組みで、共通通貨圏としてのCFAフラン圏とGCCを比較せよ。
 CFAフランを採用している国は、すべて相対的貧困国で、農業・鉱業で成り立ってる国であるが、それでも最適通貨圏と成立するには多様的すぎる問題(輸出品がコーヒー、ココア、綿、ウランなど様々)がある。また、経済統合も限定的であるので、最適通貨圏であるとは言えない。対してGCCは、すべて石油で成り立っている国であり生産構造は似通っているためこの点では最適通貨圏の条件を満たしている。しかし、域内の流通が過小であるため、この点においては最適通貨圏の条件を満たしていない。

2. IMF専務理事M. Camdesssusは、いかなる意味でメキシコ危機を「21世紀最初の金融危機と呼んだのか。
 メキシコ危機以前の通貨危機は、国際収支の不均衡による外貨準備不足などが原因で発生したものであった。対して、メキシコ危機では国際収支が原因ではなく、急激に短期的な資本の流出が原因である。これは今までの危機には見られなかった傾向である。その点で21世紀最初の金融危機と呼んだ。

3. インドネシア危機管理において、IMF structural conditionalityはなぜ批判されたのか。またその後、それはいかに改革されたか。
 IMFコンディショナリティとは、IMFの融資を受ける際に受け入れなければならない条件である。インドネシアにおいては政府が意図しない政策を実行するように迫った。当事国の主権を侵してまで、政策を押し付けるべきではないとして批判された。その後、当事国の政治状況に応じた、実行可能な政策を提案するように改革された。

4. 債務危機を経験する国において、景気後退と債務持続性のジレンマとは何か。それを克服するために何ができるか。最近のアルゼンチンとギリシャの事例を挙げて論ぜよ。
 アルゼンチンやギリシャは債務がGDP比で100%を超えるなど、非常に大きな債務を背負っていた。債務持続性に疑問を持った投資家は国債の投げ売りなどを行ったため、デフォルトの危機に陥ることとなった。一般に、債務危機に陥った国は緊縮財政を取り、財政再建を行うことになるが、増税などにより景気後退が予想される。ところが、景気を優先すれば債務不履行に陥ることは確実であり、両者のジレンマに陥ることになる。

5. 国際収支赤字と高インフレを伴う経済危機を解決する手段として、IMF programは過度に緊縮的で、経済成長にマイナスの影響を与えると批判されることがある。肯定的および否定的観点の両面から評価せよ。
 国際収支赤字と高インフレを伴う場合、一般的にはまず緊縮策が取り入れられる。肯定的な意見としては、債務削減やインフレの終息を目指す以上、緊縮策以外に妥当な政策がないとするものである。また批判的なものとしては、急激な緊縮策により、失業者の大量発生、景気の急減速などの歪みが発生する、といったものや、主権国家の内政に干渉する行為である、といったものである。確かに緊縮策は取らなければならないが、政治の状況に合わせて、実行可能な範囲で行うことが必要だろう。

6. 実体経済の統合によって地域間の生産の相関関係は強まるのか、弱まるのか。この答えは通貨統合の是非にどのような意味を持つか。

7. アジア通貨危機の当初、為替レートの減価は全体的に経済にプラスの影響をもたらすと考えられていたが、結果は逆であった。その理由をoriginal sinの概念を使って説明せよ。
 アジア通貨危機においては、危機国の通貨が総じて過大評価されていたために、切り下げを予想した激しい通貨売りが行われていた。そのため、為替レートを切り下げることによってそれが解消されると予想され、実行された。ところが、当時の東アジアでは、自国通貨建ての金融市場が発展しておらず、借入などは全てドルを中心とした外貨建てで行われていた。そのため、為替レートの減価は借金の肥大化を招き、さらなる通貨の信用危機に陥ってしまった。自国通貨建ての借り入れができない状態をoriginal sinという。

8. 経済統合のプロセスに関して、国家主権および超国家主義の意義に触れつつ、欧州とアジアを対比せよ。