マスコミは生き残れるか
大手新聞の発行部数縮小、民放テレビの視聴率の低下等、今まで「情報」を売って稼いでいた企業の業績悪化が目立つ。その背景には、SNSを筆頭とする新たな情報ビジネスの台頭がある。21世紀に入るまでは、マスコミ全体で考えれば一つの大きな独占企業といえた。ところが、インターネットの普及とともにその状況は大きく変わろうとしている。
インターネットがない時代を想像してみてほしい。朝起きてニュースを知るには、新聞を読むかテレビをつけるかしかない。家を出て会社や学校に行く途中、スマホもなく会話の中でしか情報を得られない。上司や先生からの伝聞。一日が終われば家へ帰りテレビを見る。このように限られた情報源(新聞、テレビ、伝聞)しか存在しなかった。この状況を考えると、「情報」を売る新聞やテレビが莫大な利益を上げていたのもうなずける。
21世紀に入り、パソコンだけでなくスマホまで普及しいつでもどこでも簡単にインターネットにアクセスできるようになった。そうなるとわざわざ朝早く起きて新聞を読んだりテレビを見たりする必要はない。新聞ほど詳しくはないがスマホで少し時間のあいたとき、ヤフーにアクセスすれば事足りる。家へ帰ればプログラム通りに番組を見せられるテレビを見る必要はない。ネットにアクセスして、自分の興味のあることを好きなだけすればよい。もちろん、新聞やテレビも依然として影響力は大きい。しかし、選択肢が増えたということに話題を絞ると、それは紛れもない事実である。
選択肢の増加は独占状態の崩壊に他ならない。独占状態にあれば莫大な利益を独り占めできた。しかし、利益を分け合う主体が増えれば分母の数が大きくなり、一主体あたりの利益の配分は小さくなる。その証拠に、新聞の発行部数は年々減少しており(図1)、テレビの視聴率も以前より大きな数字は取れなくなりつつある。利益の減少とともに、社員数・年収も減少してゆくだろう。数十年後、「情報」を売る仕事はなくなってしまうのだろうか。
アメリカの記者の年収は、たとえばニューヨークタイムズのような大手紙でも平均8万ドル(600万ちょい)程度*1だという。日本では、読売新聞や朝日新聞などの大手紙になると1200万円はもらっているだろう。日本のマスコミでいうと、まだまだ給与の下がる余地は大きく残っている。給与の減少とともに社員の質が下がり、サービスが劣化するかもしれない。しかし、極端に消滅してしまうということは、直近ではまず考えられない。
近年の新聞の発行部数の減少などは、独占状態の崩壊によって発生する当然の結果なのだ。インターネットの登場によって情報の価値が相対的に低下した。じゃあ、何もお金を払って新聞を読む必要もないや、と考える人が少しずつ出てくる。そうして発行部数が徐々に減少してゆく。しかし、ネットで得られる情報にも限界があって、新聞記者がやるような役人から聞き出したり、企業の重役からリークしてもらったりというようなことは絶対にできない。理由は簡単で無料だと割に合わないからである。
ある程度は「情報」を売ってもらうことも必要なのである。そのある程度がどのラインになるかは分からない。しかし、必ず必要であることは確かである。結果として、「情報」を売るビジネスってのは存続しうるのだ。
*1:ネットがソースなのでアレですが