マーケティングノート

1. マーケティングとは何か
 マーケティングとは企業の市場に対する考え方・接近法である。そもそも、マーケティングは、1900年ごろにアメリカで誕生した比較的新しい学問だ。当時のアメリカでは、急速に拡大する需要が一旦飽和点を迎え、すべてのものが買われる時代ではなくなっていた。そのような状況で、どうすれば製品を買ってもらえるか、という命題の下にスタートしたのがマーケティングなのである。いわゆる、「プロダクト志向(シーズ志向)」から「ニーズ志向」ということが叫ばれたのもこの時期であり、日本では高度経済成長の後に体験した。マーケティングにおいては、マーケティングミックス、またはマーケティング4Pというものが分析の中心になる。製品(product)、価格(price)、広告宣伝(promotion)、そしてチャネル(place)の4つである。これらを用いて、市場需要の創造や拡大をめざし、市場へ接近することが「マーケティング」と呼ばれるものである。

2. 企業が成長するためにはどうすればよいか
 日本では戦後、生活の質向上のために大きな需要が存在していた。しかし、高度経済成長を経てそれが一巡すると、需要の飽和点を迎えることとなる。未成熟市場では大きな需要が存在するが、未成熟市場では需要は限られていることが多い。企業が成長するためにはこのような状況下で生き残らなければならない。
 ここで企業に求められる戦略は以下のようなことである。①基本原点回帰、②コンセプト変換、そして③矛盾結合といったようなものだ。例えば、ビールにおいては美味しいとはなんだったか(基本原点回帰)、ビールに新しい味を導入してみてはどうか(コンセプト変換)、安いとおいしいを両立できはしないか(矛盾結合)、といったような具合である。
 また、企業は製品の新旧、市場の新旧によって4つに識別される、製品市場マトリックスを用いて、成長のためのイメージを描かなければならない。市場浸透・新製品開発・市場拡大・多角化という4つの戦略をバランスよく持つことも大切である(アンゾフの成長ベクトル)。 製品ポートフォリオという考え方もあり、その特徴から花形・金のなる木・負け犬・問題児という4つに区別される。これらをバランスよく持つことも成長へつながる。

3. 企業アイデンティティの確立のためにはどうすればよいか
 製品ごとの戦略とは異なり、企業全体の戦略を持つことも重要である。企業戦略は企業の全体像を提示するものであり、企業ドメインは企業が対象とする領域を規定するものだ。企業ドメイン多角化にも深くかかわってくる。
 多角化には大きく分けて①垂直的多角化、②集約的多角化、③連鎖的多角化の3つがある。①は多角化というよりも垂直統合であるが、②および③は利益を最大化するか、成長機会を最大化するかの違いがある。集約的多角化の場合には、それまで企業が培ってきた経営資源を最大活用することができるので、大きな利益を期待できる。連鎖的多角化の場合には、市場選択の自由度があるため、本業とは異なった事業を展開する場合が多く、企業の成長を期待できる。
 企業戦略・ドメイン・コンセプトと、多角化ということを通じて企業アイデンティティというものが形成される。そして、これをもとに消費者の中で企業イメージが形成されるので、それをよいものへとコントロールするためにも重要である。

4. 成熟市場における市場細分化について説明しなさい
 成熟市場においては、それまで通用していたマス・マーケティングというものが限界を迎える。大まかな製品開発→販売という流れでは、大きな成果をあげることはできない。成熟市場においては消費者の嗜好もそれぞれ異なり、市場細分化(マーケット・セグメンテーション)が進行する。そのためにも、企業の分析が必須である。
 企業が対象とする母体の大きさによって、マーケティングは次の4つに区別できる。市場空間の大きい順に並べると、①マス・マーケティング、②分化型マーケティング、③集中型マーケティング、④ワンツゥワン・マーケティングとなる。①は市場全体、④は個人を対象とする極端なものであり、成熟市場で求められるのは②か③となる。企業が市場シェアを取りたい場合には、市場細分化を認めつつも、全方位的な分化型マーケティングを採ることになるし、採算を重視するならば一つのセグメンテーションに集中する集中型マーケティングを採用する。
 市場細分化方法には、人口動態的特性軸(デモグラフィック変数)によって分類するものと、社会心理的特性軸(サイコグラフィック変数)によって分類する2つの方法がある。例えば、ライフステージなどの客観的な分析は前者であり、個人の思想などにより大きく影響されるライフスタイルといった主観的な分析は後者になる。

5. 市場データ分析について説明せよ
 企業が使用するデータには一次データと二次データの2種類がある。前者はある目的のために直接調査されたデータであり、後者はほかの目的のために事前に調査されたデータである。一次データの調査には、質問法、観察法、実験法といったものがある。質問法では例えば、面接・ファックス・インターネット・留め置き・電話・質問票などがある。実験法では、独立変数(例えば、商品の陳列方法)を変動させて、従属変数(例えば、売上高)にどのような影響があるか調査される。二次データには内部データと外部データとがある。

6. 消費者行動分析について説明せよ
 マーケティングは、消費者を中心とした学問であるので、消費者モデルの研究も豊富だ。その中でも有用とされるのは、①S-O-Rモデル、②消費者情報処理研究、③ライフスタイル研究の3つである。
 S-O-Rモデルとは、消費者が刺激(stimulus)、生活体(organism)、反応(response)の順に反応することを表したもので、情報処理の結果としての理解や態度などの関係を叙述している。それに対し消費者情報処理研究は、消費者を情報処理者としてとらえて、実際に購買に至るプロセスを表している。例えば、ブランド・カテゴライゼーションなどをすることによって、ブランドを想起集合と拒否集合の2つに分ける。これを通じて購買時に選択肢をリストアップする。また、知識と関与といったことも研究されていて、ある製品について知識を豊富に持つ消費者はより高度な機能などを求めやすい(高関与)。だが、そうでない消費者(低関与)にとっては、そのような機能は邪魔でしかなくシンプルなものを求めようとする。ライフスタイル研究とは、前述の2つに比べて消費者を「生活者」として全体的な視点からとらえようとする。社会学的・心理学的実体の消費者に接近する効果的な方法である。
 消費者間のインタラクション(相互作用)を考慮することも大切である。企業にとってはオピニオン・リーダーを形成することが重要で、これらの層によって後続の消費者の購買意欲が刺激される。製品の普及過程研究などがこれにあたる。準拠集団の研究などもされていたが、今では個人への集団からの影響といった、より心理的な分析が主流である。
 また、ポストモダン消費者行動分析なども注目されている。より情緒的・経験的な視点から消費者行動を理解しようとするもので、ポストモダン以前の分析が数理的過ぎたという反省に立つものだ。快楽的消費などの研究はこれで、消費それ自体が目的となっているファッションや音楽などの研究がされた。

7. 企業の競争について説明せよ
 ポーターが表した競争要因には5つある。水平的競争要因として、新規参入業者・代替品、垂直的競争要因として、買い手と供給業者、そして業界内の要因として、競争相手が挙げられる。
 組織産業論ではSCPパラダイムという企業のモデルがある。構造(structure)→行動(conduct)→成果(performance)という3つの流れによって企業は戦略を策定する。構造としては、集中度(業界の上位企業へのシェア集中具合)、参入障壁(規模の経済性、埋没費用、ブランド・エクイティ、チャネルの確保、特許など)という2つの指標がある。特に参入阻止戦略を企業が取ることがあり、それには低価格戦略、スイッチング・コストの形成、ブランド増殖などの戦略がある。これにより参入障壁が形成される。また、企業の行動の結果として、同じような戦略をとる企業による戦略グループが形成される。これらには利益の差が生じることが多いが、経営資源の差などにより移動障壁が形成され、企業のグループ間の移動が妨げられる。アウトソーシングOEM、M&Aなど新しい競争も生じている。

8. 流通構造について説明せよ
 流通システムとは、製品が製造業者から消費者に至るまでの流れである。主に、メーカー→卸業者→小売業者→消費者といった過程をたどる。このほかにも通信販売、訪問販売、ネット販売などがある。
 日本の流通システムは「過多・零細・生業的」に象徴される低生産性が特徴である。特に、1950年に制定された大規模小売店舗法により大型小売店の進出が阻害されてきた経緯がある。この結果、二次卸、三次卸など流通迂回率が大きくなってしまう。
 卸機能には、需給調整機能・助成的機能・市場移転機能の3つがある。また、「取引数最小化の原理」などを根拠に卸機能の重要性が語られることが多いが、POS管理の登場や大規模小売店の「物流センター」などが登場したことによりその効果に疑問もある。
 従来、メーカーの支配力により卸・小売業者は販売拠点としての性格を持っていた。ところが大規模小売店の登場などによりメーカーの支配力は消失し、今では消費者の側に立つ、購買拠点としての性格が強くなっている。小売側が力を持つ際に拮抗力パワーという支配力を巡った闘争が起こったりもしたが、戦略同盟・製販同盟など、現在では共業による生産性向上を目指す企業も多い。

9. 企業の製品対応について説明せよ
 製品とは、消費者の問題を解決する「便益の束」である。企業の、製品アイテム/ライン/ミックスはそのような理念に立たなければならない。
 製品ライフサイクルという研究がある。製品仕様を導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つに分け、それぞれに最適な戦略を分析したものである。その具体性から非常に有効な分析ではあるが、製品ライフサイクルが従属変数であるのか、独立変数であるのかという議論もあり、むしろ自らの製品によってコントロールすることも大切だという主張も強い。
 製品市場では先発優位性が強い。企業は経験効果などによりコスト面で優位に立つことができるし、初期採用者などのうま味のある層を獲得できる。また、初期から市場にいるために、その製品の代名詞的なポジションも獲得できる。
 ブランドの基本戦略(市場の新旧とブランドの新旧)やブランドの採用戦略(市場の類似性とブランド間の類似性)で区分した分析を用いてブランドの確立も重要である。しかし、ブランドが1つ失敗するとそのファミリーブランドも同様の危機に陥るため、安易なブランド拡張には慎重でなければならない。

10. 企業の価格対応について説明せよ
 企業の価格設定法には、コスト・プラス法、損益分岐点を用いたもの、実勢価格、入札価格などがある。また特に、新製品の価格設定は、上澄み価格吸収価格、浸透価格、導入価格など、企業の戦略に密接に関連したものとなる。製品ミックスを考慮したものになると、プライス・ライニング、抱き合わせ価格、キャプティブ価格などがある。心理面を考慮したものになると、端数価格、威光価格、慣習価格などが採られる。割引サービスも様々なものがあり、現金割引、数量割引、機能割引、アロウワンス、特売価格、ロス・リーダー戦略、季節割引などさまざまである。

11. 企業のコミュニケーション対応について説明せよ
 企業の広告宣伝に対する消費者の反応プロセスとして、AIDAモデル、イノベーションの採用モデル、消費者情報処理モデルなどがある。特にAIDAモデルは、(Attention / Interest / desire / action)に分けて消費者を分析したものである。
 また、消費者に積極的に製品を勧めるプッシュ戦略と、市場需要の拡大をめざすプル戦略のバランスも重要である。近年ではインテグレーテッド・マーケティング・コミュニケーションという、企業の広告の融合化の動きも強くなっている。

12. 流通チャネル対応について説明せよ
 企業のチャネル政策には、開放的、排他的、選択的の3種類がある。従来の日本では、メーカーが傘下の小売にしか卸さない排他的なチャネル政策が行われた。ところが、垂直的マーケティングシステム(VMS)の登場により、これらの政策に疑問が浮かぶようになり、今ではVMSを中心としたチャネル政策に比重が移っている。垂直的マーケティングシステムには、その統合度において、企業システム、契約システム、管理システムの3つがあり、企業の資本の下に統合しているか、契約の下に統合しているかなどの違いがある。取引コストと垂直統合にかかる費用を考えて、契約か合併かを選択することになる。
 日本においても、従来の低集中度販路から高集中度販路に移行しようとしており、建値制とリベートによる価格維持を主な目的とした流通システムも崩壊しようとしている。

13. 企業の競争対応について説明せよ
 ポーターの3つの基本戦略(コストリーダーシップ、差別化、集中)
 製品ライフサイクル別戦略→デファクトスタンダードの争い
 競争地位別戦略

14. サービス・マーケティングについて説明せよ
 サービスの特性として、無形性、需要の変動制、品質の変動制、不可分性、消滅性が挙げられる。

こんなもんでテスト受けてくる。